ハンガリーはビールよりワインが有名な国。その中でも特に有名なのが、赤ワインの「エグリ・ビカヴェール」をはじめとするエゲルワインと、今回紹介する貴腐ワインのトカイワインです。
目次
貴腐ワインとは
ワインと言えば赤ワインと白ワイン、それにロゼワインといった分類が一般的ですが、それとは別にこの「貴腐ワイン」があります。この貴腐ワインとは、一体なんなのでしょうか。
ワインは通常、収穫したブドウから果梗(軸)を取り除き、果汁を絞って発酵をさせます。このとき、種子や皮をいつ取り除くかで白ワインと赤ワインに分かれ、赤ワインは発酵が終わってから、白ワインは発酵をする前に、これらの余分な部分を取り除くのです。
しかし貴腐ワインでは、ボトリティス・シネレアと呼ばれる菌(通称:貴腐菌)をブドウに付着させます。この貴腐菌のはたらきによって、ブドウの実の中にある水分が蒸発し、房に付いた状態で干しブドウのような状態になります。この状態を「貴腐」と言うのですが、この状態でブドウには、糖分が非常に多く残っているのです。こんな状態のブドウから作った「貴腐ワイン」の特徴は、一般的なワインとは全く違うその「甘さ」。まるで、ワインを飲んでいるとは思えないような感覚を、楽しめるのです。
そんな「貴腐ワイン」の産地が、ハンガリーの東部・トカイという街にあり、ここで作られる貴腐ワインは「トカイワイン」と言われています。そして驚くべきは、このトカイは2002年に世界遺産に登録されていること。まあ、世界遺産への登録自体は驚くべきことではありませんが、トカイは「世界自然遺産」ではなく、「世界文化遺産」に登録されているのです(ブドウ畑の景観)。
そんなトカイには、ブダペストから日帰りでツアーにも行けますが、鉄道を使って自力でアクセスし、日帰りで旅行をすることも可能です。今回は旅行情報も合わせながら、トカイの貴腐ワインの魅力を伝えていきたいと思います。
なお、トカイは貴腐ワインが有名ですが、他の一般的なワインももちろん作られていて、貴腐ワインは「トカイ・アスー」というブランド名になっています。トカイのワイナリーではトカイ・アスーを含む様々なトカイワインの飲み比べができますが、貴腐ワインを楽しみたいのであれば、トカイ・アスーの銘柄を注文してみましょう。
世界三大貴腐ワインとは
さて、ここで少し寄り道をしましょう。貴腐ワインには実は、「世界三大」と言われるものがあります。1つは、フランス・ボルドー地方で作られるソーテルヌ(Sauternes)、もう1つはドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ(Trockenbeerenauslese)、そして3つ目がここ、ハンガリーのトカイです。
トカイの貴腐ワインの特徴はなんと言ってもその「甘さ」で、他の2つの貴腐ワインをダントツで上回る甘さを備えています。
トカイ貴腐ワインの甘さ(糖度)は「プットニョス」という独自の単位で表され、一般的なトカイワインは、プットニョスが3~6(数字が大きくなるほど、甘さも増えます)。
ブダペストからトカイに行くには
ブダペストからトカイまでは、列車で1本で行くことができます。2018年8月現在の情報だと、直通列車は朝9:25発、11:25発、13:25発…と、日中に2時間に1本のペースでブダペスト東駅から運行されていて(ニューレジュハーザという街に行く急行列車です)、朝9時台の列車に乗ると12時過ぎにトカイに到着して、夕方17:48にトカイを出発する列車に乗れば、21時前にブダペストには戻ってこれる、というスケジュールとなっています。
ただし、ハンガリーの鉄道は遅れることもしょっちゅうあって、定刻通りの運行はあまり望めないのも事実。スケジュールに余裕を持たせるならトカイや近隣の街(ミシュコルツ)で1泊する、あるいはブダペスト発の日帰りツアーを利用する、というのもありかと思います。
ハンガリー国鉄の切符は、ブダペスト東駅などの窓口や自動券売機で購入ももちろんできる他、オンライン予約も可能ですので、便利な方法でチケットを押さえておきましょう。ちなみに、出発当日に切符を買いましたが、片道約4600フォリントで、オンライン購入割引で約4100フォリント、日本円にして約1600円という値段でした。
僕が利用した日は、トカイ方面行きの列車の折り返しとなる、ブダペストに到着する列車が遅れていたため、出発が約30分遅れとなり、途中線路工事などもあって、トカイへの到着は13時30分頃、約1時間半の遅れとなっていました。
トカイに着いたら
トカイの駅は、街の中心から約1kmほど離れています。駅前には路線バスも走っているようなのですが、時刻がよく分からないので徒歩での移動をオススメします。
トカイ駅を出たら左手に進んで行き、道路とぶつかるので更に左に進みます。線路をくぐって10分ほど歩くと、ワインセラーやレストランが並ぶ「ラーコーツィ通り」に出ます。
場所はこのあたりです。
ワインセラーはいくつも建ち並んでいるのでめぼしいところがあれば入ればいいですが、地球の歩き方で紹介されているのは、トカイ・アスーの異なるプットニョスを飲み比べできる「ラーコーツィ・ピンツェ」と、少し山側にあってワイン蔵が併設されているヒーメシュドヴァルです。
ヒーメシュドヴァルのほうが少し奥側にあります。
ヒーメシュドヴァルで飲み比べをしてみた
ヒーメシュドヴァルでは、ワイン単品をグラスあるいはボトルで注文することももちろんできますが、それ以上に手軽なのが、トカイアスーを含む5種類ないし6種類のワインを飲み比べできるプランです。
飲み比べは、30mL×5種類で2000フォリント(約800円)か、50mL×6種類で3000フォリント(約1200円)か、の2種類です。なお、ハンガリーではdl(デシリットル)の単位が未だに使われていて、ワインだと「0.1dl(=100mL)」という表記が一般的となっています。dl=100mLで、グラスワインで多いのは1dLいくら、というものです。
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①トカイの定番ワイン・FURMINT(ヒューミント)2017
飲み比べでは、辛口(ドライ)→半辛口(セミドライ)→甘口(スィート)の順に出されます。またチェイサーも用意されるので、お口直しも問題ありません。
なお、トカイ産のブドウでは、このFURMINTの割合が最も多く(取れ高の約50%)、最も定番のトカイワインと言えます。
辛口ですが、喉に残る感じはしないので飲みやすいです。
②続いて辛口のワイン・ZETA(ゼータ)2017
飲み比べの2つ目は、同じく辛口のゼータワイン。辛口なんですが、ブドウの風味がしっかりの残っているワインでした。
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③半辛口のSARGAMUSMOTALY(サールガムシュコターイ)2017
3つ目は、セミドライのサールガムシュコターイ。一般的には「ムシュコターイ」という銘柄で、これは英語(日本語)で言うところの「マスカット」。ブドウの収穫時期が9月下旬以降と遅めのワインで、甘さと酸味がほどよく混じったワインです。
④いよいよ甘口のkövérszőlő(クーヴェールスールー)2016
続いては「太ったブドウ」と言う意味の、クーヴェールスールー(甘口)。ワインにも色味が少しかかっていて、やや甘口、といった味わいでした。
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⑤甘口・CUVEE(クヴェー)2016
5つ目は甘口のクヴェー。どうやら、いくつかの種類のブドウをブレンドして作った白ワインのようです。4番目のワインよりも甘みは強いですが、こちらも飲みやすいです。
⑥最後にトカイアスー・プットニョス6 2015
最後に出てくるのが、トカイアスーで一番甘い、プットニョス6。今まで出てきたどのワインよりも色味があって、飲んでみましたが甘い! ワインというよりは、甘いブドウジュースを飲んでいる感覚で、まさに「おやつワイン」と言うのが適しています。
番外・トカイアスーの最高峰Eszencia(エセンツィア)2007も追加注文
6種飲み比べはこれで終わりなのですが、せっかくなのでトカイアスーの中でもプレミア中のプレミア、エセンツィア(エッセンス)も注文してみました。
このワインは、貴腐ブドウの中でも9年以上寝かせたものだけを使用する、トカイアスー・オブ・トカイアスーとでも言うべき銘柄で、お値段なんと、20mLで2500フォリント(約1000円)という高さ。飲み比べの前半で出てきたワインは、100mLで約500フォリント(200円)~、トカイアスーのプットニョス6でも3000フォリント(1200円)という値段なので、いかに高いかが分かります。ちなみにこのエセンツィアは、ボトルで注文すると0.375Lで45000フォリント(約18000円)というお値段。ハンガリー価格なので安く感じてしまうかもしれませんが、日本感覚ならゆうにボトルで5万円は超えるでしょう。
上の写真で20mLなのですが、飲んでみた第一声は「ハチミツ」。もはやワインというよりも、あっさりしたハチミツという味わいで、喉にも適度なまろやかさと甘みが残る(やや残る感じがします)ワインでした。色も、赤でも白でもロゼでもなく、琥珀色をしている、なんとも不思議なワインです。
これに、おつまみとしてチーズ3種盛りとオリーブ(990フォリント)を加えて、約7000フォリント(2800円)。これだけのワインをこの値段で2時間くらい楽しめるのは、なかなかお値打ちかと思います。
時間に余裕があればワイン蔵見学も
このヒーメシュドヴァルでは、飲み比べを注文して室内で飲んだ場合、地下にあるワイン蔵見学も無料ですることができます。店員さんに連れてもらって、樽や、グラスが山積みになったカート(コンテナ)を見ることができました。
団体客と一緒に見て回ったので窮屈でしたが、上手くタイミングがあれば個別に見て回ることもできると思います。
日帰りも可能、でも余裕を見るなら1泊して
いかがでしたでしょうか。僕が訪れたときは、行きの列車が1時間半ほどおくれて、トカイでの滞在時間が4時間ほどになってしまいました。駅と街中の移動で往復30~45分くらいはかかるので、実際にワインを楽しむのは3時間ほどとなってしまいました。
それでも十分と言えば十分ですが、もし他のワインセラーにも訪れたい、という方は、トカイ、あるいは途中のミシュコルツで1泊して、長く滞在してみましょう。宿の検索は、一番掲載数の多いBooking.comから。
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