今回はシベリア鉄道旅行記の続き。
目次
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近づく中蒙国境。漆黒の闇の中、列車は二連に到着
張家口を出発して、22時前に列車はモンゴルとの国境・二連駅に到着しました。(地図だと二連浩徳(にれんほと)となっている場合もあるようです)
ここで、中国出国からモンゴル入国のパスポートコントロールが行われます。
そして、実はこの中蒙国境越えでは、鉄道ファン必見の「儀式」も行われるのですが、それは追い追い書くとして……。
まずは、中国出国のための税関審査があります。
↑こういう書類が予め渡されているので、二連到着までに記入しておきます、二連駅に停車中に係員が乗り込んで、まずは税関書類の回収、次に別の係員(国境警備隊?)が乗り込んできて、パスポートと出国書類(どの便に乗っているのか、とかを書いた書類)を渡します。
手荷物検査は、税関審査のときに行われます。といっても、個室内にあるあらゆる荷物を係員がざっと確認しただけでしたが。
パスポート審査の間、特にすることはないので乗客は車内で暇にしています(笑)。なお、これはシベリア鉄道全般に言える注意点なんですが、駅に停車中はトイレが施錠されて使えないので、必ず列車が動いている間に用を済ませておきましょう(列車によっては、駅に到着10分前から出発後10分くらいは使えない場合もあります)。
これは、トイレでしたものをそのまま路線脇に垂れ流すというシステムを取っているからなんです。日本のように、廃棄物だけ回収して車両の底についた設備で濾過、なんてことはしていません。
ちなみに、この国境審査中は「列車の外に出るのは厳禁」です。なので、本当に個室の中でおしゃべりするか、本を読むか、それくらいしかすることがありません。
そして、1時間くらい経つと、中国出国のスタンプが押されてパスポートが返ってきます。
この時点で、時間は22時50分くらい。ここから更に、客車は2時間ほど停車するのですが……
出発時間でもないのに突然客車が動き出した!?
出国審査が終わったら、一応乗客は外に出ることができます。国境の町なので、余っている中国元を使い切ったりすることもできると思いますし、実際に乗客の半分くらいは客車を降りて、駅周辺に出かけていきました(夜食を買ったり、トイレに行ったりというのもあるようです)
↑これが二連駅の駅舎のようです。(客車内から撮影)
が、審査が終わってしばらくすると、機関車の汽笛と共に、いきなり列車が進行方向に向かって動き出したではありませんか!!
実際、数十人の乗客はホームに出ていたので、めちゃくちゃ慌てています。「え、俺たちを置いて出発しちゃうの!?」みたいな。
が、これには実は理由がありまして……
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鉄道ファンでなくても必見!工場見学を無料で体験できる!!
この時、客車が向かったのは、実は駅の外にある車庫。
実は、巷では有名な話なんですが、中国とモンゴル・ロシアではゲージ(線路の幅)が違うので、ここで台車の交換をしないといけないんです。
そして、これが面白いんですが、普通は乗客を降ろしてそういう作業はするものだと思うんですが、ここではなんと、乗客を客車に入れたまま、客車を向上に突っ込んで台車の交換作業をするんです(笑) いわば「鉄道の旅を楽しみながら、工場見学も無料で付いてくる」というやつです(そんなサービス、他にないか)。
では、実際にどんな手順で作業が進むのかというと…
①客車(全15両)を機関車が引っ張って、駅の外れにある工場の手前まで移動
②客車を前後二つに切り離す(恐らく、8両と7両)
③前後それぞれを、左右2つの線路に分けて工場内に入れる
という手順を踏みます。
侵入直後の工場内はこんな感じで、客車は見当たりませんが台車だけ腐るほどあるという、なかなかシュールな光景です(笑)
そしてここからが面白いんですが……
④各車両を更に1両ごとに分解
します。
↑客車の先端から見ると、確かに前の客車が切り離されています。
そして、
⑤客車をジャッキで持ち上げる
ことで、台車と客車本体を切り離します。
↑窓を開けると、ジャッキが見えます。
↑こんな感じ。
↑この写真の状態は、まだ持ち上がっていなかったと思います。
↑分かりづらいですが、右側にレールの溝が2つあるのが分かるでしょうか?
レールは一本ですが、その外側に少し溝がありますね。
中国のレール幅 > ロシア・モンゴルのレール幅、なので、恐らくこの外側の溝に中国用の台車が、内側にロシア用台車があるのでしょう。
↑ジャッキで持ち上げた後の様子。僕の乗っていた客車は前よりだったからか、先に作業が進んでいくようです。
乗客が全員客車の隅に集まって、深夜の工場での作業を興奮しながら見守る、というのもなかなか現実離れしていますね(笑)
ただ、個人的に気になるのが、レール幅が異なると、台車の中心もずれるはずなんですけど、それどどうやってしのいでいるのかということですね…。客車の台車受けに空間的にバッファーがあって、台車の中心がずれでも問題ないようにできているのか、よく分かりませんでした。
ジャッキ客車を持ち上げた後は、
⑥台車を一斉に横滑りさせてゲージの違う台車を導入
します。
これはこれでなかなかシュールでした。動画を撮っているので、改めてアップしないといけませんね…。そのほうが臨場感が伝わると思うので。
これ、工場見学そのものですよ。ツアー日程には書かれていませんでしたけど(笑)
僕たちの客車群は、台車を交換し終えました。隣では作業が続いています。
こんな光景、世界でも10箇所くらいしか見られないんじゃないでしょうか。
⑦一連の作業を終えたら、駅に向かいます。
ここでは、前の車両群を再度連結した後に進行方向(工場の前方)に一度出した後、逆に進んで後方の車両群とドッキングさせて、そのまま二連駅のホームに戻っていきます。
↑これは作業工程表。拡大したら詳しく見ることができます。漢字なんで、イメージだけでも掴めるんじゃないでしょうか。
二連駅に戻ってきました。ここで、客車を出ていた人達とも感動の再会。(工場見学を見たければ、トイレは二連到着前に済ませてずっと車内で粘っておきましょう!!)
ちなみに、台車交換したあとはどんな感じなのかといいますと…
実はこの駅、レールが4本あるんですね。
この写真は台車交換後なので、こちらのほうがゲージが狭いんですが、この写真で車輪が載っていないレール2本が、中国のレール幅です。
なので恐らく、「北京からモスクワまで、一本のレールで行けるんだ!」というのは、ここでレールが切れているので厳密に言うと間違いですね…。
夜の二連駅。
この時点で0時を回っていたと思いますが、疲れも忘れるほどの興奮を覚えることが出来ました。これは鉄道ファンでなくても、絶対に感動(というか、純粋にびっくり)するスポットだと思いますよ。
このあと、列車は闇を抜けてモンゴルに突入です。
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