今回は、外務省が提供している「海外旅行登録」サービスの「たびレジ」のご案内です。
近年、世界各地、特にヨーロッパ周辺ではテロが相次いでいたり、政情不安定な地域での暴動などが以前より深刻なものとなってきています。
そんな時に、渡航先の情報を自ら入力し、その国・地域の最新の治安情報や情勢をメールで受信できるサービスが「たびレジ」です。
目次
「たびレジ」ってそんなにすごいサービスなの?
これまで、外務省や当局のこのようなサービスを利用してこなかった方からすると、メールアドレスを登録してもどんなサービスが受けられるのか分からない…と疑問に思う方もおられるかも知れません。
ですので、ここでは先日、僕のメールに配信された内容を一部抜粋して掲載してみます。
●イスラム過激派組織ISILがラマダン期間中のテロを呼びかける声明を発出しています。
●5月27日(土)から6月27日(火)頃は,イスラム教のラマダン月及びラマダン明けの祭り(イード)に当たります。
●最新情報の入手に努め,テロの標的となりやすい場所を訪れる際には,安全確保に十分注意を払ってください。情報収集には「たびレジ」を活用してください。1 6月12日,イスラム過激派組織ISIL (イラク・レバントのイスラム国)は,ラマダン期間中のテロを呼びかける声明を発出しました。ISILは,2015年及び2016年にも同様の声明を発出しています。同声明との関係は明らかではありませんが,過去2年,ラマダン月に多数のテロ事件が発生しています。
今年についてもラマダン開始後,多数のテロが発生しており,そのうちイラン,仏,オーストラリア,英国,フィリピン等での事件については,必ずしも関与は明確ではないものの,ISILが犯行を主張しています。2 5月27日(土)から6月24日(土)頃は,イスラム教徒が日の出から日没まで断食を行うラマダン月に当たります。ラマダン終了後には約3日間(6月25日(日)頃から6月27日(火)頃),イードと呼ばれるラマダン明けの祭りが行われます。
(※)ラマダン月の期間は目視による月齢観測に依拠するため,上記日程は直前に変更されることがあります。3 近年,ラマダン月に多くのテロが発生していることを意識し,以下の対策をお願いします。
(1)最新の関連情報の入手に努める。
(2)金曜日に注意する。金曜日はイスラム教徒が集団礼拝を行う日であり,その際,モスク等宗教施設や群衆を狙ったテロや襲撃が行われることがある。本年のラマダン月については,6月2日,9日,16日及び23日が金曜日に当たる。
(3)以下の場所がテロの標的となりやすいことを十分認識する。
観光施設,観光地周辺の道路,記念日・祝祭日等のイベント会場,レストラン,ホテル,ショッピングモール,スーパーマーケット,ナイトクラブ,映画館等人が多く集まる施設,教会・モスク等宗教関係施設,公共交通機関,政府関連施設(特に軍,警察,治安関係施設)等。
(4)上記(3)の場所を訪れる際には,周囲の状況に注意を払い,不審な人物や状況を察知したら速やかにその場を離れる,できるだけ滞在時間を短くする等の注意に加え,その場の状況に応じた安全確保に十分注意を払う。
(5)現地当局の指示があればそれに従う。特にテロに遭遇してしまった場合には,警察官等の指示をよく聞き冷静に行動するように努める。
【車両突入の場合】
●ガードレールや街灯などの遮へい物がない歩道などでは危険が増す。
【コンサート会場,スポーツの競技場等の閉鎖空間】
●会場には時間より早めに入る,終了後はある程度時間を置いてから退出するなど,人混みを避けるよう努める。
●セキュリティの確保されていない会場の外側や出入口付近は危険であり,こうした場所での人だまりや行列は避けるようにする。
●不測の事態の発生を念頭に,会場の出入口や非常口,避難の際の経路等についてあらかじめ入念に確認する。
●周囲がパニック状態になっても冷静さを保つように努める。
【爆弾,銃器を用いたテロに遭遇した場合】
●爆発,銃撃の音を聞いたらその場に伏せるなど直ちに低い姿勢をとる。
●頑丈なものの陰に隠れる。
●周囲を確認し,可能であれば,銃撃音等から離れるよう,速やかに,低い姿勢を保ちつつ安全なところに退避する。閉鎖空間の場合,出入口に殺到すると将棋倒しなどの二次的な被害に遭うこともあり,注意が必要。4 海外渡航前には万一に備え,家族や友人,職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。
さらに,渡航・滞在先の国・地域において緊急事態が発生した場合,メールアドレス等を登録されている場合には,外務省から随時一斉メール等により最新の情勢と注意事項をお伝えしています。
3か月以上滞在する方は,必ず在留届を提出してください。
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/zairyu/index.html )
3か月未満の旅行や出張などの際には,「たびレジ」に登録してください。
(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/# )5 海外滞在中の安全対策については,「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」も参照してください。
(http://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/golgo13xgaimusho.html )(参考広域情報・スポット情報)
・ラマダン月のテロについての注意喚起(2017年05月22日)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2017C107.html
・イラン:テヘランにおけるテロ事件の発生に伴う注意喚起(更新)(2017年06月08日)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C129.html
・オーストラリア:メルボルンにおけるテロ事件発生に伴う注意喚起(2017年06月06日)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C125.html
・欧州でのテロ等に対する注意喚起(更新)(2017年06月06日)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2017C124.html
・英国:ロンドンにおけるテロ事件の発生に伴う注意喚起(更新)(2017年06月04日)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C122.html
・フィリピン:マニラのリゾートホテルにおける銃撃事件(2017年06月02日)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C119.html
いかがでしょうか?僕は「たびレジ」をポーランドで登録しているので、ポーランドやヨーロッパ諸国の情勢ニュースの配信が主ですが、先日フィリピンのマニラで起こった事件についての記載もされています。
また、5月末から6月末にかけてはイスラム教のラマダンの時期となり、その時期に事件が多く起こっているので注意をする旨も書かれています。確かに、2015年、2016年にもこの時期にテロが多く発生しましたし、この情報を見る限りでは、その時期にISILが声明を発表している、ということについても書かれています。
もしあなたが、この記事をご覧になるまでにこれらの情勢や動向、情報について一定以上の理解をされていたのであれば、たびレジに登録する必要は特にありません。このサービスを利用しなくても、自分で十分に身の安全を確保できるだけの情報処理能力をお持ちだと思います。
しかし、ここに引用したメールの内容について知らなかった、という場合は、すぐに「旅レジ」に登録をして下さい。
事実、つい最近(6月中旬)にも、イギリスやベルギーで治安を脅かす大きな事件が発生していますが、この外務省の情報を入手しておけば、リスクを下げる行動を取れる可能性は高まりますし、不必要に危険な場所に近づく、という行動をとる可能性も低くなるのが事実だと思います。
僕は4月末にオランダに旅行に行く際にも、「たびレジ」のオランダ情報に登録をしてその情報を入手していました。ちょうど、僕が旅行に行く前日か前々日に大きな祝日があったので、それに関するトラブルや危険についての情報提供もされていました。
外務省を舐めたらいけません
僕がここまで、この外務省のサービスの利用を推奨するのは、元外務相だった佐藤優の著書を通して、この機関の対外関係での底力や、どれだけ優秀なメンバーが日本の国益を考えて仕事をしているのか、ということをある程度知ることができたからです。
佐藤優本人は、トラブルがあって外務省を退職しているので、彼の著書だけを通して外務省の存在を語ることは不十分であることは承知ですが、少なくとも彼の本を通して知った、外務省のエリート達の頭のキレや情報収集能力、交渉能力は、超一流と言って差し支えありません。
そんなエリート達が集まった省庁が、一般国民に対して各地域の情勢を分かりやすくリアルタイムで配信しているのがこの「たびレジ」なのです。このサービスを利用しない意味はありませんし、たびレジを使わずに無知のまま海外でトラブルに巻き込まれてしまったとしても、それは自己責任と言われてもある意味仕方のないものかもしれません(もちろん、このサービスを通して情報収集することは、身の安全を100%確保することを保証するものでないことは当然ですすが)。
最低限の情報でも、知っているか知っていないかでは行動や心の持ちように雲泥の差が生まれることも事実です。不用意に危険に巻き込まれる可能性を減らして、万が一の場合にも冷静に判断をして行動をできるように、たびレジや、外務省のホームページから確認できる各種渡航情報は最低限確認するようにして下さい。
たびレジの登録方法
たびレジの登録方法に必要なのは、案内を受け取るためのメールアドレスと、渡航先の滞在スケジュールのみです。
登録はこちらのページから。
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
ここをクリックすると、以下のようなページが表示されます。
「カンタン登録」をクリックして、個人情報の取り扱いに関して同意をした後は、
メールアドレスを登録するページに飛ぶので、ここでアドレスを入力して先に進みます。
その後、メールアドレスに届くメールから旅行情報(旅行先、期間)を入力すれば終わりです。留学やワーホリ、仕事などで長期にわたって滞在をする場合は、滞在先の情報をたびレジに登録した後、別の国に旅行等に行く際は必要に応じてその国の情報を登録することに加えて、「在留届」も各国にある日本大使館に提出しておきましょう。この情報も、各日本大使館が現地にいる日本人(在留邦人)の人数や各種情報を確認するのに必要なものです(外務省は、3ヶ月以内の旅行の場合は「たびレジ」を、3ヶ月を超える場合は、これに加えて「在留届」の提出を推奨しています)。
なお、在留届はオンライン提出もできるので、該当者は以下の記事も参考に手続きをして下さい。
海外で長期滞在するなら、必ず「在留届」をネットで提出しよう!
補足:国際情勢の動向を理解するための教養を身につけるには
以下では、上で引き合いに出した佐藤優や他の作家の本で、現在の国際情勢の動きを理解するのに最低限読んでおきたい本を紹介します(ただ、本を読むには高校で習う世界史の近現代史の基本的内容の理解(サイクスピコ協定等)がないとダメです)。
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①佐藤優「世界史の極意」
恐らく、多くの方は僕と同じように、世界史には苦手意識を持っていると思います。なんと言っても、似たようなカタカナの名前ばっかり出てくるし、舞台が次から次へと移るから同じ時代に別の地域で何が起こっているのかを理解するのに時間がかかるし、覚えること多すぎるし…。ただ、現代社会、特にISのテロとヨーロッパの関係(もっと言うと、これはキリスト教とイスラム教の問題ですね)、あるいはアメリカやロシア、中国といった大国がどのように舵取りを進めていくのか、ヨーロッパで見られる民族独立運動…。これら現代の社会問題を解きほぐして理解するには、最低限の世界史の教養が必要です。
そんな、「生きた世界史」の魅力を学べる本がこの「世界史の極意」です。ちなみに、佐藤優の本を読んでいるとよく出てきますが、彼が受け持った早慶の講義で、学生に世界史の抜き打ちの年号テストを行ったら、両大学の平均点が5点前後だったようなんですが、早慶の学生でもこんな程度なので、逆に多くの方は心配することなく、こういう本を読んで世界史を学び直すといいでしょう。(ちなみに、そのご学生はしっかりと勉強して、きっちりとハイスコアの平均点となったようです)。
②佐藤優「現代の地政学」
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世界史の教養と同じほど大切なのが、「地政学」についての理解です。平たく言えば、世界地理がどういう風に政治と関係しているのか、ってことなので、歴史じゃなくて地理の話です。
日本が抱える領土問題や、中国奥地・中央アジアの地政学、ウクライナの複雑な問題など、こちらも現代の国際情勢の基本的内容を押さえておくのに必須の読み物と言っていいでしょう。地政学という言葉はあまり普段耳にするものではありませんが、この本を通してその魅力を知って頂きたいですね。
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③佐藤優×宮家邦彦「世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方」
この本は、現代を読み解く上での世界史の大切さについて語られている対談本なんですが、対談相手の宮家邦彦がまた化け物級の人間です。外務省時代はアラビア語研修を受けているんですが、イラクやアフリカ、中国等、複数の地域で業務に従事して外務省のキャリアを駆け上がった超エリートで、こんな人いるんだ…と圧倒されたいうのが率直な感想です。この本を読むと、外務省というのがいかにすごい組織なのかというのが分かりますよ。
④佐藤優×池上彰「新・戦争論」
佐藤優は元外務相、一方で池上彰と言えば、個人的にはかつて週刊こどもニュースを担当していた印象が強いですが、2人とも知的に貪欲で、この本は「身の回りに転がっている情報をいかに活用して、見えないものを観るか」ということについての具体的なノウハウが公開されています。
佐藤優と池上彰の対談本は他にもあるんですが、それらは先に紹介した佐藤優の本とテーマがダブる部分があるので、少しずらしたこの本をチョイスしました。
はっきり書いておくと、大人になってから国際情勢の動向を理解して、基本的な教養を身につけるのであれば、佐藤優の本、あるいは彼と池上彰の対談本を読むのが一番手っ取り早いです。なんと言っても、佐藤優はかつて外務省で、第一線で日本の国益に関する情報収集や交渉を行っていた人物ですから、彼から学ばないというのはナンセンスです。ただ、人によっては内容が小難しくてとっかかりにくいかもしれないので、そういう場合によっては池上彰が分かりやすく解説を加えている対談本を読むのがオススメです。
まとめ・外務省の「たびレジ」に登録しよう
後半は話が若干飛んでしまいましたが、今回お伝えしたかったのは、当局である外務省が用意しているサービスは、海外に行く人は必ず利用しましょう、ということです。合わせて、世界史や地理の基礎教養を知らずに海外で恥をかかないためにも、最低限の勉強はしておきましょう。
世界史も地理も、自分が生きる現実世界と関係があるのであれば、案外すんなりと頭に入ってくるものですから。
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