多数のLCCがしのぎを削っているヨーロッパの中で、ポーランドやハンガリーをはじめとする東欧で一人勝ち状態を収めているのがウィズエアーです。
誕生は2003年と歴史がありますが、ハンガリーの国営航空だったマレブ・ハンガリーの経営破綻後、実質的にハンガリーのフラッグキャリアとなっているのこのウィズエアー。現在はポーランドなどにオペレーション支社をポーランドとブルガリアに設置して、特にポーランドとハンガリーを拠点にして多数の国にフライトを飛ばしています。
ウィズエアーの利用記や予約の注意点については以前に別の記事でもまとめていますが、今回は改めて、東欧LCC王者であるウィズエアーの魅力や注意点を、思う存分まとめていきたいと思います。
目次
①魅力1:ウクライナに実質的に唯一就航しているLCC
シェンゲン圏の外に位置して、EUにも加盟していないウクライナには、ライアンエアーなどの他のLCCがほとんど就航していません。そのため、ウクライナで空路で入国する際には、これまではウクライナ国際航空やポーランド航空、オーストリア航空などの、各国のナショナルフラッグキャリアを利用しなければいけませんでした。
しかし、ウィズエアーはキエフ(ジュリャーヌィ)空港、ポーランドにほど近いリビウ、そして東部のハリコフ(ハルキフ)に多数の路線を就航させています。LCCのため毎日運行とはいきませんが、ポーランドやハンガリー、そして中央ヨーロッパ以西の各国から、ウィズエアーを利用してウクライナに簡単に入国することができます。
特に多いのはポーランド/ドイツとウクライナの路線で、キエフにはポーランドからはワルシャワ(ショパン)、ヴロツワフ、ルブリン、ポズナン、グダンスクなど、ポーランドのほぼ全域から、そしてドイツもベルリン(シューネフェルト)、フランクフルト、ケルン、ハンブルク、ハノーファーなど、多数の都市を結んでいます。
リビウにはポーランドのブロツワフ、カトヴィツェ、グダンスク、そしてドイツのベルリンとドルトムントの他にロンドン・ルートンのみですが、リビウに訪れるには普通、ポーランドから陸続きで異動しなければならないのと、ポーランド-ウクライナの陸路国境審査は移民の多さ故に時間がかかりすぎるため、LCCを利用してリビウに行くことは、少し前までは実現できなかったことでした。
東部ハリコフ(ハルキフ)にはウィーン、カトヴィツェ(ポーランド)、ドルトムント(ドイツ)のみの就航となっていますが、ウクライナ好きの人にとっては利用しがいのあるLCCと言えるでしょう。
※2018年10月から、ライアンエアーもウクライナに就航することとなりました。就航都市などの条件によりますが、ウクライナに行く選択肢もこれからますます増えていくでしょう。
②魅力2:ハンガリー~バルカン諸国の路線が充実
ウィズエアーは事実上ハンガリーのナショナルフラッグキャリアであることから、ブダペストと周辺国を結ぶ路線が多数就航しています。
とりわけ充実しているのは、旧ユーゴスラビア共和国を形成していた国やその周辺の路線で、ブダペストからはサラエボ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、スコピエ(マケドニア)、ポドゴリツァ(モンテネグロ)、プリスティーナ(コソボ)、ティラナ(アルバニア)、ソフィア(ブルガリア)、クルージュ=ナポカ/トゥルグ=ムレシュ(いずれもルーマニアで、かつてはハンガリー領だったトランシルヴァニア地方に存在)、ブカレスト(ルーマニア)などにフライトが飛んでいます。
逆に、旧ユーゴスラビアの中でもザグレブ(クロアチア)、リュブリャナ(スロベニア)、ベオグラード(セルビア)には就航しておらず、これらの国に行くには別の航空会社を使うか、バス/鉄道で移動しなければいけません。
いずれにせよ、旧ユーゴスラビア諸国などはマニア向けの国ではあるのですが、それらの国に陸路での煩わしい国境審査を通らずに移動できるウィズエアーの存在は、かなり心強いと言えるでしょう。
③魅力3:ワルシャワはショパン空港を利用
LCCは基本的に、地方にある専用空港を利用してコスト削減に取り組み、その格安サービスを提供しています(例えばパリのボーヴェ、オランダのアイントホーフェン、ロンドンのスタンステッドやルートン、オスロのサンデフィヨルドなど)。
ワルシャワでも同様に、ライアンエアーは郊外にある「モドリン」空港に発着しているのですが、このウィズエアーはポーランド航空などのフラッグキャリアと同じ、ショパン空港に発着しています。
そのため街の中心部への移動も簡単で、空港までの移動に時間とお金をロスすることもありません。ショパン空港発着のウィズエアーが、他の国の中心空港に発着することはほとんどないため、目的地(出発地)でのLCC空港と街の移動には時間がかかってしまいますが、片方の空港が街の中心にあることは、LCCユーザーにとっては見逃せないメリットと言えるでしょう。
④南コーカサス諸国(グルジア、アゼルバイジャン)にも就航
ウィズエアーの更に頼もしい点は、ほとんどLCCの就航していないグルジアとアゼルバイジャンにもフライトを飛ばしているという点です。グルジアは、首都のトビリシではなく西側のクタイシという街ですが、アゼルバイジャンは首都のバクーです。アゼルバイジャンに入国するには日本人はビザが必要ですが、これもバクー空港入国の場合はアライバルビザをその場で取れ、日本人は無料という措置もとられています。
南コーカサスも大多数の日本人は訪れない国となっていると思いますが、興味のある人にとってはヨーロッパ諸国からウィズエアーを使って移動するのが一番確実で安心できる方法ではないでしょうか。
⑤イスラエルへの路線も充実
こちらも物好きな人のための情報になりますが…
イスラエル(テルアビブ)へのフライトも恐ろしいほどに充実しているのがウィズエアーの特徴で、東欧からはワルシャワ、カトヴィツェ、ルブリン(以上ポーランド)、ブカレスト、クルージュ=ナポカ、ティミショアラ、シビウ、ヤシ、クライヨバ(以上ルーマニア)、ブダペスト、デブレツェン(以上ハンガリー)、プラハ(チェコ)、コシツェ(スロバキア)と、謎の就航具合となっています(笑)
ウィズエアーの強みは、ウクライナや南コーカサス、バルカンなどのいわゆる東欧諸国、そしてイスラエルへの路線網が充実していること。もちろんアイスランドやスカンジナビア諸国、西欧と、東側を結ぶフライトも多く飛んでいるのですが、東欧周遊を計画する際にとても頼りになる存在のウィズエアーは、もっとその知名度が日本人に知れ渡っても何ら不思議ではありません。
⑥「ウィズエアーディスカウントクラブ」サービスの提供
ウィズエアーには「ディスカウントクラブ」という、年間の有料会員サービスが存在します。
年会費は29.99ユーロ(約4000円)で、このメンバーシップを保有すると、会員限定の航空券割引セール(20%オフや30%オフ)の実施や預け荷物料金の割引などが適用されます。
ヨーロッパのどこかの国(特に東欧)を拠点にして、ウィズエアーを使い倒す場合には入って損のないサービスと言えます。
僕の場合、2018年4月にこのサービスに登録して何度かフライトの予約をしましたが、平均して、通常料金の6割ほどの運賃で検索・購入ができます。東欧(特にハンガリーやポーランド)に一定期間生活をして、ヨーロッパ圏内に飛行機で移動する機会が多いのであれば、このディスカウントクラブに登録して損はありませんよ。
さて、続いてはウィズエアーの注意点について、いくつかまとめておこうと思います。
①注意点1:預け荷物が1つしか認められない
ウィズエアーの難点は、最低料金(チケット)の場合は手荷物が1つしか認められない、ということです。普通、ライアンエアーなどのLCC、あるいはフラッグキャリアでは「持ち込み手荷物+カメラバックなどの手回り品」の2つを持ち込むことができますが、ウィズエアーではこの「手回り品」が、最安チケットではカウントされません。
公式サイトにも明記されているように、手回り品を持ち込む場合は「Wizz priority」という、手回り品持ち込みと優先搭乗がセットになった有料サービスを、チケット購入時に申し込まないといけません。
この点が若干面倒なのがウィズエアーの難点で、何も知らないままチケットを予約してしまうと、搭乗時に不要な追加手数料を取られてしまいます。この点だけ、ウィズエアー利用時には注意して下さい。
②オンラインチェックインは出発48時間前のみからできる
2017年の8月に条件が改定されて、ウィズエアーのオンラインチェックインは、座席の事前指定をしていない場合、利用するフライトの出発48時間前からしかできなくなりました。逆に言うと、最低限のサービスだけが含まれる格安チケットでも、別料金で座席指定をしている場合、あるいは、Wizz priorityの優先搭乗サービスを追加購入している、又は預けて荷物や座席指定のサービスなどが含まれるフルパッケージのチケット(割高)を購入している場合は、フライト日の15日前からチェックインは可能です。
スマホアプリを入れておけば、アプリからチェックインをしてアプリで搭乗券を示せば大丈夫なのですが、それでも手続き時間が制限されるのは少しネックです。
まとめ
今回はウィズエアーの魅力と利用時の注意点をまとめました。一人でも多くの方が、ウィズエアーを利用する機会を持って頂ければと思います。
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